お兄ちゃん以上恋人未満

その人は友達の彼の友達だった。

友達の彼は既婚者だったけど、そのひとは独身だった。

婚約までした彼女と破談になり、

残されたのは

新居になるはずだった新築マンションのローンと

ひとりには広すぎる部屋だ、と自嘲気味に言っていた。

 

友達カップルを中心として男女3人ずつ6人のグループでよく遊んだ。

男性二人は既婚者だった。

独身の彼・・・徹さんのマンションと私の家はクルマで5分ほど

という近さで、ふたりだけでもよく遊んで、彼が送り迎えしてくれた。

徹さんは私より8歳年上だった。

私は19だった。

 

ふたりで遊ぶのはもっぱら徹さんの部屋で、

テレビを見たり、ゲームをしたり。

料理が得意な徹さんが、カルボナーラを作ってくれて

ふたりで「おいしい、おいしい」と食べたり。

 

ある日いつもどおり私の自宅近くの角で私を降ろすとき、

徹さんが自分のほっぺをつついてみせた。

ほっぺにキスしてあげたら満足そうに走り去っていった。

いつもの6人で、徹さんのおうちでお好み焼きパーティーをした。

料理が得意で味にうるさい徹さんが中心になって料理の準備をした。

私はこの時初めて、

お好み焼きにはすりおろした山芋やこんにゃくのあられ切りを入れると

美味しくなることを知った。

 

私はパイナップルをカットする役を命じられ、いかにきれいに食べやすく切るか苦心していたけど、なんとかカットして余った葉もきれいに

盛り付けたところで、急に悲しくなった。

(徹さんは私のことどう思ってるの?

私にほっぺにキスをせがんでから

3か月経つけど

あれからなにも進展はない・・・

あのキスに深い意味はなかったの?

私のことは妹みたいに思ってるの?

私は徹さんの彼女になりたいのに・・・)

 

恋愛関係は男性がリードするもの、

と信じて疑っていなかった私は

徹さんへの強い想いとたくさんの疑問符を抱え

心のバランスを欠いていた。

 

「ちょっと外の風に当たってくるね」

という不自然すぎる言い訳をして私は外に出た。

 

近くに流れる小川にかかる橋の上で欄干にもたれて、

気持ちが、涙が落ち着くのを待った。

 

矢作さんが私を追ってきた。

 

「好きなんでしょ、徹のこと」

「・・・わかりますか」

「わかるよお、そりゃあ・・・君より8年も多く生きてるんだよ」

「私は矢作さんから見たらおこさまですか」

「そんなことないよ、俺も結婚してなかったら・・・なーんてね。

ただね、待ってあげてほしいんだ」

「・・・」

 

今ならわかる。

徹さんは婚約破棄の傷が深すぎて恋愛に積極的になれなかったんだって。

でもこの時の私は若くて、未熟で、自分の傷しか見えていなかった。

 

「待つっていつまで待つの?あと何か月?すごく待ってるのに?」

「そうかそうかあ・・・とりあえずみんなのところに戻ろ?

みんな心配してるよ・・・徹も」

 

私は不満足だったけど、みんなにも徹さんにも心配はかけたくないので

矢作さんに連れられて部屋に戻った。

 

お好み焼きパーティーはなにもかも美味しく、楽しく、

一口だけ味見させてもらった徹さん作のカクテルも美味しくて

大満足のうちにお開きになった。

 

部屋にはぐでんぐでんに酔った矢作さん、ほろ酔いの徹さん、

ベッドから動けないほど少量で酔ってしまった私が残った。

 

「もう少し酔いがさめたら送っていくから」

「うん・・・矢作さんは?」

「あいつは今夜泊めるわ。あれじゃ電車に乗れない」

「・・・なんにもしないから俺も入っていい?」

「うん・・・」

なにかしてもいいです、好きだから・・・と思った。

その時。

突然、バーン!とベッドのスプリングがへこんで跳ねた。

 

「え~いいなあ~おれも入れてえ」

 

まだぐでんぐでんの矢作さんがベッドにダイブしてきたのだった。

 

「何言ってんのおまえ!寝てたんじゃなかったのか」

「起きてるよ~」

「だめだ、出ろ!俺も出るから!・・・梨花ちゃん、送ってくわ」

「うん・・・ありがとう」

 

思わぬジャマが入って、

この、徹さんの気持ちを確かめる絶好のチャンスが失われたのだった。

 

これからしばらくしてから、友達カップルは別れ、

なんとなく6人グループも解散した。

 

徹さんと私も、これきり会ってない。

徹さんはやっぱり恋愛が怖かったのか、

それともわたしは、追いかけるほどの存在でもなかったのか

もはや確かめるすべはない。

 

大人になった今、思い出すのはなぜか

男前だった徹さんの横顔ではなく、

「待ってあげてほしいんだ」

と親友のために頼んでおきながら

ふたりのベッドにダイブして

思いっきりジャマをした、

おちゃめな矢作さんのとぼけた顔なのだ。

 

 

 

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